営業における“守り”の対応法

営業・販売

百戦百勝は善の善なる者には非ざるなり、戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり(孫子 謀攻篇)

営業活動においては、攻めの場面よりも防御の場面が多いかもしれません。どれだけ新しい業務を獲得しても、防御が不十分であれば、事業の成長は難しくなります。今回は、営業における「防御」の重要性と効果的な戦略について解説します。

1. 防御の難しさは「相手の出方が分からない」ことにある

防御が難しい理由の一つは、相手の動きが予測しにくい点です。防御の場面では、特に「節用」と「警戒」が重要です。

  • 節用:非重点領域には必要最小限のリソースを割り当てること
  • 警戒:競合に予期せぬ利益を与えないように注意すること

その上で、競合が攻勢に出た場合は、次の原則に従って対応します。

① 機動力の確保

相手の動きが不明な状態で無理に動くと、疲弊するばかりです。必要なのは、戦力を温存し、相手の動きが明確になった瞬間に迅速に対応できる体制です。内部リソースだけでなく、外部の協力者や情報源を用意し、競合の動向をいち早くキャッチできるようにしましょう。

② 後発のミート

競合の提案に対抗するだけでは、同じ土俵で戦うことになります。それよりも、競合の良い提案をさらにブラッシュアップし、素早く提案することが効果的です。そのためには、取引先からの競合情報を早く取得できる体制が必要です。

③ 利益のブラックボックス化

最大の防御は、相手に攻める意欲を与えないことです。「楽して儲けている」と思われると、競合は攻撃を仕掛けてくるでしょう。しかし、「どこで利益を出しているのかわからない」と思わせれば、競合は攻めにくくなります。

2. 不利な状況下での戦術

どれだけ警戒していても、規模の大きい競合の参入や天災など、不利な状況は避けられないことがあります。そんな時には、次の戦術が有効です。

① 拠点防衛

競合がこちらを圧倒していると合理的に判断した場合、得意分野にリソースを集中し、売上の減少を覚悟で戦線を縮小することも必要です。競合だけでなく、時代や取引先の状況変化により、従来の業務が通用しなくなることもあります。この場合、完全な敗北を避けることが最優先です。

② 戦略的撤退

拠点防衛すら困難な場合、無理に対抗するよりも撤退を選ぶことが賢明です。可能であれば、営業的な接点だけは残しておくと良いでしょう。競合が無理をして攻勢をかけている場合、時間が経つにつれて状況が好転することもあります。

③ 焦土戦術

中には、領域の維持が困難になった際、競合を苦しめるために激しい値引き攻勢を仕掛けてくる企業もあります。この戦術は、取引先との信頼を損なうリスクがあるため、慎重に対応する必要があります。競合がこの戦術を仕掛けてきた場合は、毅然と拒否することも大切です。

営業において、守備の要諦は「攻めても意味がない」と競合に思わせることです。持久力を高め、競合の提案にうまく対応し、決定的な敗北を回避することが、長期的な成長に繋がります。

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