其の愛する所を奪わば則ち聴かん(孫子 九地篇)
圧倒的シェアの強者が持つ力とは
ランチェスター戦略では、シェア40%以上、かつ2位企業の1.7倍のシェアを持つ企業や事業を「強者」とし、それ以外は「弱者」と定義しています。では、なぜ圧倒的1位の企業が「強者」であり続けることができるのでしょうか?ここでは、その理由を考えてみます。
取引先との理想的な関係とは
法人取引において、理想的な関係は「安定的かつ継続的な取引関係の構築」です。そのためには、取引先にとって自社が「重要な取引先」である必要があります。重要な取引先とは、取引先企業の価値創出活動において「欠かせない存在」となる企業です。具体的には、自社が提供する製品やサービスが、取引先の製品やサービスの価値を直接左右するような存在を指します。
シェアトップの企業は、こうした「重要な取引先」として認識されることが多く、取引を打ち切られるリスクが非常に低くなります。取引先にとって、自社の製品やサービスにとって重要なパートナーを手放すことは、事業に悪影響を与えるからです。
シェアトップ企業の強さ:景気変動への耐性
シェアトップの企業は、景気低迷期にさらに強力な立場を発揮します。例えば、取引先が発注量を削減する必要に迫られたとき、最初に削減されるのは貢献度の低い取引先への発注です。一方、重要な取引先にはできるだけ発注量を維持するのが一般的です。そのため、シェアトップの企業は不況時でもシェアを維持しやすく、さらにはシェアを拡大するチャンスとなります。そして、景気が回復した際には2位以下との差をさらに広げることができるのです。
最初の問い合わせの重要性
さらに、取引先が新たな調達を検討する際、最初に問い合わせを受けた企業が受注する確率は75%に達します。トップシェアの企業は、その取引先との密接な関係性から、最初に相談されることが多く、この点でも有利に立てます。加えて、スケールメリットにより価格や納期の交渉でも柔軟性を発揮しやすく、競争優位を保つことができます。
シェアトップの企業が強者である理由は、その市場での支配力だけでなく、取引先との強固な関係や景気変動への対応力、さらには初期段階から受注機会を得やすい点にあります。企業が市場で成長し、長期的に生き残るためには、こうした強者の特性をいかに自社に取り込むかが重要です。