企業の経営者には、大きく分けて「オーナー経営者」と「サラリーマン経営者」の二つがあります。更にオーナー経営者も創業者本人と後継者、サラリーマン経営者も内部昇格者と外部招聘者に分けることができます。それぞれのタイプには特徴があり、長所と短所が存在します。
オーナー経営者の特徴
オーナー経営者とは、企業の所有権を持つ経営者を指します。多くの場合、創業者やその家族がこれに該当します。オーナー経営者の最大の特徴は、企業に対する強い所有感と責任感です。自らの資産を投入しているため、企業の成長や存続に対するコミットメントが非常に高いです。特に創業者にとっては、会社とは自分の一部であり、古参の社員もまたその一部です。創業者にとって会社とは、全てをかけて育てるものであり、社員についてもその生活に責任を負わなければならない存在です。会社に不祥事が起きると経営者が責任をとるとして辞任するのはよく見られる光景です。しかし、創業者にとっては責任とはどこまでいっても果たすものであり、辞めることは選択肢にすら入らないのです。
長所
長期的な視点: オーナー経営者は、会社とは子供のようなものであり、育て、次世代に引き継ぐべきものであるため、長期的な視点で経営を行います。
意思決定のスピード: 企業の所有者であるため、意思決定が迅速で柔軟です。外部の承認を待つ必要がないため、変化に迅速に対応できます。
独自のビジョン: 創業者の場合、強いビジョンを持ち、それを実現するための独自の戦略を展開することができます。データにとらわれず、自分の感性を信じる経営者も多いです。
その他に、オーナー経営の場合、経営者と社員とは根本的に立場が異なるため、社内派閥ができにくく、会社内部がまとまりやすいと言えます。特に創業経営者の場合、その実績から社員の尊敬も得やすく、カリスマ性をもって社内をまとめ上げるケースも良くみます。自分も最初の就職先はオーナー企業でしたが、古参幹部社員は創業者のことを「親父」と呼び、「親父に言われたらしゃーない」と事ある毎に口にしていました。
短所
リスクの集中: 個人の資産が企業と密接に結びついているため、失敗した際のリスクが非常に高いです。
感情的な意思決定: 企業に対する感情が強いため、合理的な判断が難しくなることがあります。
後継者問題: 次世代への事業承継が難しく、後継者不足が企業存続のリスクとなることがあります。
オーナー経営で難しいのは代替わりです。叩き上げとしてカリスマを持つ創業者と、その後継者は常に比較されます。特に後継者を若い頃から知っている古参社員から、後継者は頼りなくみられがちです。この場合は、創業者が率先して後継者を尊重する姿勢を見せる、後継者は創業者が得意でない分野で、自分なりの実績を築くなどが対応策となります。
また、天才的な視点から企業を急成長させた創業者であっても、時代の変化とともに天才ではなくなるケースも見られます。創業者のカリスマもあって、NOといえる社員がいなくなり、組織全体が軌道修正できなくなることもあります。
サラリーマン経営者の特徴
サラリーマン経営者とは、企業の雇われ経営者を指し、株主や取締役会の監督下で企業を運営します。度重なる選抜をくぐり抜けた経営のプロフェッショナルであり、企業の目標達成に向けて組織を効率的に運営することを求められます。
長所
専門知識と経験: 経営のプロフェッショナルとして、豊富な知識と経験を持ち、客観的かつ合理的な意思決定を行います。
広い視野: 多様な企業や業界での経験を持つことが多く、広い視野で経営に取り組むことができます。
組織運営のスキル: 大規模な組織の運営や管理に優れており、効率的に目標を達成するための体制を整える能力があります。
短所
短期的な視点: 雇用契約や報酬体系が短期的な成果に結びついているため、長期的な利益よりも短期的な成果を重視する傾向があります。
株主の圧力: 株主や取締役会の意向に左右されやすく、独自のビジョンを貫くことが難しい場合があります。
退任のリスク: 企業の業績次第では、任期途中で退任を余儀なくされるリスクがあります。
経営者が特別な存在でないことは、その対抗勢力もできやすく、社内派閥による勢力争いに発展することがあります。そうなると社内調整に時間を要し、本来重要な顧客対応等がおろそかになることがあります。特に注意を要するのは、支店や子会社などにおける所謂“天下り”のサラリーマン経営者です。本来経営職であるはずのポジションが、“上がり”のポジションになってしまうと内部のモチベーションは低下し、組織活動全体が停滞する危険があります。経営職に“上がり”ポジションを作らない、子会社の経営職は、親会社の経営職を選抜するためのエリートポジションにする等の対策も考えなければなりません。
オーナー経営者とサラリーマン経営者には、それぞれ独自の強みと弱みがあります。オーナー経営者は長期的な視点での経営や迅速な意思決定が可能ですが、リスクが集中しやすい点が課題です。一方、サラリーマン経営者は豊富な専門知識を活かして組織を効率的に運営できますが、短期的な成果に焦点を当てざるを得ない場合があります。