善なる者とは勝ち易きに勝つ者なり(孫子 形篇)
ランチェスター戦略では、シェア(市場占有率)を、競争力を左右する要素として重要視しています。シェアが高い企業ほど、以下のような有利な点があります。
コスト優位性:シェアが高い企業は大量生産や仕入れでコストを抑えやすく、価格競争で有利になります。
ブランド力:シェアが高いと、消費者に対するブランド認知が高まり、信頼性が向上します。
資源の優位性:シェアが高い企業はより多くの資源(人材、技術、資本など)を持つことができ、さらに強力なマーケティングや研究開発に投資できます。シェアが競争優位の指標であるためには、シェアの数値が営業戦力に正しく転換されている必要があります。
シェアに応じた推奨される戦略は以下のように分類されます。
1.市場シェア 74%以上
シェアが74%を超えると独占に近い状況となり、競合に対し絶対的に優位に立ちます。2位以下が投入する新商品等に対し、間髪入れずに対応し、優位を確保します。但し、シェア100%の独占は、他業種からの参戦等を誘発し、自社のポジションが不安定化することもあります。“勝ちすぎない”判断が時には重要になります。
2.市場シェア 42-74%
リーダーの戦略圧倒戦略:2位以下の競合他社に対して圧倒的なシェアを維持・拡大するため、広告、プロモーション、流通チャンネル強化を行います。全方位戦略:競合他社の新製品・新サービスなどに個別にミートし、優位性を保ちます。
3.市場シェア 20-41%
チャレンジャーの戦略集中戦略:特定の地域や特定の製品に集中し、そこに資源を集中投下してシェア拡大を図ります。差異化戦略:リーダーとの差を埋めるため、価格競争や独自性を強調した製品・サービスで差別化します。
4.市場シェア 11-19%
ニッチャーの戦略ニッチ戦略:大手が手を出しにくい市場の隙間を狙い、特定のニッチ市場で独自の地位を築きます。提携戦略:大手企業との提携や協力関係を築き、互いに利益を共有し合います。
5.市場シェア 1-10%
フォロワーの戦略模倣戦略:リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣し、リスクを最小限に抑えつつ市場での存在感を維持します。提携・統合戦略:シェアの小さい企業同士が協力して競争力を高めることが有効です。
徹底しなければならないことは、“勝ち易きに勝つ”こと。自分より強い相手に正面から向かっていっても勝つことは困難です。自社より営業戦力の乏しい相手に狙いを定めて、そのシェアを吸収しながら上位との差を詰めていくことが大切です。
シェアの状況によって適切な戦略を選び、競争の中で優位に立つことがランチェスター戦略の基本です。
シェアを考える上で、市場の定義は非常に重要です。例えば、ひとつの顧客を考える場合、全社を対象とするだけでなく、地域、事業部門、製品・サービスの用途、価格帯など、さまざまな切り口が考えられます。また、顧客以外にも、地域や気候などの地理的区分、年齢・性別や職業といった人口統計的区分、使用目的や使用シーンに基づく区分など、多様な視点から市場を捉えることができます。
市場区分を検討する際は、自社にとって優位性を発揮できる点と、事業の継続に十分な売上・利益が見込める規模を持つ市場を基準にすることが重要です。