成果管理と行動管理の違いと営業管理における適切な選択

営業・販売

営業は、会社を代表して顧客と折衝する役割です。必然的に組織を意識した行動が求められます。

組織運用に関する四原則とマネージャー及び担当者の役割について説明します。

1.組織運用の四原則

命令一元の原則

  • 組織の各メンバーは、自分の上司からのみ命令を受けるべきという原則です。これにより、指示が明確で混乱を避けることができます。命令が複数の上司から来ると、矛盾や混乱が生じる可能性があります。

権限委譲の原則

  • 権限は、責任を果たすために必要な範囲内で委譲されるべきという原則です。権限を委譲することで、営業現場が意思決定に関与でき、組織の柔軟性が高まります。ただし、権限の委譲には責任も伴うため、権限を持つ人はその権限に見合った責任を負う必要があります。

責任絶対性の原則

  • 組織の全てのメンバーは、自分の業務に対して絶対的な責任を負うべきだという原則です。この原則により、責任の所在が明確になり、業務の遂行に対する意識が高まります。

権限と責任の一致原則

  • 権限と責任は一致させるべきという原則です。つまり、ある役割や業務に対して権限を持つ人は、その業務に対して相応の責任も負わなければなりません。これにより、責任を持つ者が自らの権限を適切に行使し、業務の達成に責任を持つことが促されます。

2.マネージャーの役割

適合性

  • 任務がその組織の目標や状況に適しているかどうかを評価することです。また、前提条件や仮定が現実的で妥当かも確認します。これにより、組織のリソースや能力に見合った目標設定ができます。

実行可能性

  • 利用可能な資源(人員、資金、時間など)を基に、任務を達成する可能性を評価します。リソースが不足している場合、任務の達成が難しくなるため、適切なリソース配分が重要です。

受容可能性

  • 任務を達成するために必要な人的、物的、時間的コストが、期待される成果や法的、経済的、政治的に受け入れられる範囲内にあるかを確認します。これにより、計画が現実的であり、組織や関係者によって受け入れられるものであることが保証されます。

3.担当者の役割

実行の義務

  • 担当者は、自分が合意した任務を遂行する責任があります。これは、自己の判断に基づいて行動し、任務達成に向けて努力することを意味します。自己責任の下で任務を達成することが求められます。

報告の義務

  • 任務の進捗状況や当初設定した仮定条件の変化について逐次報告する義務です。これにより、上司や関係者が任務の現状を把握し、必要な支援や調整を行うことができます。報告は透明性を保ち、組織内の情報共有を促進します。

組織運用の原則に基づいて営業活動を管理しますが、営業管理についての考え方は大きく二つに分けることができます。売上や利益などの狭義の成果に重きを置く「成果管理」と、営業プロセスに重きを置く「行動管理」です。

一般的には、「成果管理」は顧客が主導権を握る場合、「行動管理」は上司が主導権を握る場合に向いていると言われています。

営業管理の要素成果管理行動管理
1.業績評価基準の焦点
営業マネージャーの関心は、目標達成のプロセスか、もしくは成果そのものか。
営業マネージャーは、最終成果に大きな関心を抱く。営業マネージャーは、最終成果を達成した方法に大きな関心を抱く。
2.業績評価基準の焦点
業績評価基準は少数か、それとも多くの基準で判断するのか。
営業マネージャーは、主に顧客の視点による、少数の業績評価項目に基づいて部下の成績を評価する。営業マネージャーは、多数の業績評価基準に基づいて部下の成績を客観的に評価する。
3.営業マネージャーの干渉度
業務分担や営業担当者、マネージャーに関する問題に、誰が最終的な判断を下すのか。
営業マネージャーによる監督の干渉度は比較的低い。営業担当者が最終的な判断を下す。営業マネージャーによる干渉度は比較的高く、営業マネージャーが最終的な判断を下す。
4.「報・連・相談」の頻度
営業マネージャーと部下の間では、どれくらい報告・連絡・相談が交わされているか。
営業マネージャーと部下たちが連絡し合うことは少ない、あるいは全くない。営業マネージャーと部下たちは、頻繁に、かつ幅広い内容について、連絡し合う。
5.営業マネージャーの監視度
マネージャーは業務リポートに関心を抱いているか、事務的に対応するのみか。
営業マネージャーが、部下たちを監視することはほとんどない。営業マネージャーは、部下たちを常時監視している。
6.コーチングの量
営業マネージャーは部下たちの営業スキルや能力を向上させる提案をしているか。
営業マネージャーは、ほとんどあるいは全く指導しない。営業マネージャーの指導は頻繁で、内容も充実してる。
7.査定の透明性
査定はどれくらい客観的であり、具体的かつ正確か。
査定の透明度は極めて高い。査定が不透明である。
8.報酬制度
給与の大部分を占めているのは成果給か、マネージャー判断に基づくボーナスか。
営業担当者の報酬は大部分が変動給であり、顧客が生み出した成果を基準とする。営業担当者の報酬は大部分が固定給であり、基本給と能力給を基準とする。
エリン・アンダーソン ビンセント・オニェマー「成果管理か、行動管理か」より作成

チームプレーが重要な商材やサービスを取り扱っている場合に、成果管理主体の評価体系を採用すると、組織が混乱することがあります。例えば、継続取引の大口顧客を中心としたルート営業では、顧客の業績が営業成果に連動するにもかかわらず、成果管理に重きを置くといったケースが見られます。

このような状況では、業績が好調な顧客を社内で取り合う問題や、重要な顧客であっても単年度の業績見通しが良くない場合に社内の協力が得られないなどの弊害が生じます。したがって、取り扱う商材やサービスの特性に応じた管理方法を考慮する必要があります。

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