中小企業白書2022年版で、中小企業においてブランドへの取り組みは、利益向上のために必要であるとの論調がありました。
1.ブランドへの取り組みは売上総利益を向上させる?
“ブランドの構築・維持のための取組の実施有無別に、売上総利益率の水準を比較したものである。これを見ると、取組を行っている企業の方が、取組を行っていない企業と比較して売上総利益率の水準がやや高いことが分かる。また、第2-2-5図はブランドの構築・維持のための取組の有無別に取引価格への寄与を見たものである。これを見ると、取組を行っている企業の方が、取組を行っていない企業と比較して、ブランドが取引価格の維持・引上げに寄与している企業の割合が高くなっていることが分かる。売上総利益率を引き上げる要因としては、コストの削減などもあるため、今回の調査からは一概にはいえないものの、ブランドの構築・維持に取り組むことにより、差別化が図られ、取引価格の維持・引上げが可能となり、売上総利益率の向上など企業業績へのプラスの影響が生まれている可能性が考えられる。”(中小企業白書2022年版 第2部新たな時代へ向けた自己変革力 第2章企業の成長を促す経営力と組織 第1節 ブランドの構築維持に向けた取組 より転載)
2.ブランドへの取り組みは取引価格の引上げに貢献する?
“ブランドの取引価格への寄与状況別に見たものである。これを見ると、取引価格に寄与していると回答した企業において、「顧客や社会へのブランドメッセージの発信」などのブランドの構築・維持に係る取組の回答割合が高いことが分かる。また、取引価格に「大いに寄与している」企業と「ほとんど寄与していない」企業を比較すると、「自社ブランドの立ち位置の把握」や「ブランドコンセプトの明確化」において、回答割合に大きな違いがあることから、こうした取組の重要性がうかがえる。”(中小企業白書2022年版 第2部新たな時代へ向けた自己変革力 第2章企業の成長を促す経営力と組織 第1節 ブランドの構築維持に向けた取組 より転載)
3.中小企業のブランドへの取り組みと、売上総利益・取引価格の向上は、疑似相関!
1、2で転載したように、中小企業白書2022年版では、ブランドへの取り組みは中小企業においても取引価格や売上総利益に貢献するというように読み取れる論調でした。継続してブランドに取り組み、ブランドの認知が関係者間に定着した企業であれば、取引価格や利益に貢献していることは賛成です。しかし、ブランドが醸成されるには、それなりの期間が必要です。トライブレインは、利益・取引価格の向上を実現するのは、価格決定権を持つ商品・サービスの存在と考えています。
ブランドに取り組むから、売上総利益の向上や取引価格の引上げを実現できるのではなく、「知財などの無形資産への投資が、価格決定権を持つ商品・サービスの獲得を実現し、その結果として売上総利益や取引価格の向上が実現する。」と考えているのですが、皆さんはどのように考えますか?