営業予算と営業戦力の配置の関係

営業・販売

之れを計りて得失の計を知り、之れに角れて有余不足の処を知る(孫子 虚実篇)

営業戦力の配置は、営業予算の配分と一致している必要があります。営業予算は経営目標であるとともに、営業担当者の成果指標でもあります。

シェアの観点から営業予算を見ると、各取引先の発注予算×自社のシェア=取引先当たりの予算、全取引先総和=営業予算となります。

現代の日本のような低成長時代では、すべての取引先が等しく成長するわけではありません。むしろ、成長分はシェア上位の企業が獲得するため、多くの企業が前年を下回る数字がスタート地点とならざるを得ません。とはいえ、営業現場では前年割れの営業予算を組むことは少なく、これが現場とのギャップを生む一因です。

1.営業予算の二つの視点

営業予算は、経営側から見ると、企業の存続と成長に必要な収入を確保する手段です。設備投資や人材への投資(採用、教育、昇給など)も、営業予算が達成されることによって可能になります。

一方、営業担当者から見る営業予算は、取引先ごとの実績や見込みを基に積み上げたものであり、ノルマのようなプレッシャーを伴います。そのため、現場では予算達成が難しいと感じる場合、保守的な見通しを報告しがちです。このように、経営と営業現場では予算に対する視点が異なるため、そこに差異が生じます。

2.営業マネージャーの役割と営業予算策定プロセス

営業予算のデカップリング・ポイントは営業マネージャーです。営業マネージャーは、経営側から割り当てられた営業予算と、現場が積み上げた見込みとのギャップを正確に把握し、それを埋めるための戦略や戦術を立案します。以下は、そのプロセスの例です。

取引先ごとの年度推移確認(マネージャー):可能ならば5年間、最低でも3年間の取引先ごとの売上推移を確認します。

取引先ごとの増減要因抽出(営業担当者):これまでの売上傾向と異なる可能性とその要因を洗い出します。

取引先ごとのシナリオ設定(営業担当者):通常、ベスト、ワーストの売上見込みを取引先それぞれに想定します。

取引先ごとのベース予算仮設定(マネージャー):①~③を踏まえて、取引先ごとに営業予算を仮に割り当てます。

対策必要予算額の抽出(マネージャー):経営から与えられた予算と④仮設定したベース予算合計との差額を確認します。

重点取引先の決定(マネージャー):不足がある場合、どの取引先に注力するかを決め、②③を参考に、具体的な営業戦略に至るまで検討します。

予算配賦(マネージャー):仮配賦した予算を⑤⑥の内容を踏まえて修正し、配賦を行います。

検証(マネージャーおよび営業担当者):予算だけでなく、取引先ごとの方針や戦略、営業行動に至るまで、お互いが納得するまで話し合います。必要がある場合は④まで戻ります。

最終決定:営業担当者にとって、営業予算は個人査定の重要な項目です。達成するための具体的な方法論に至るまで、営業マネージャーと営業担当者双方がお互いに納得するまで話し合いましょう。

3.「伸ばす」取引先を決めるポイント

見通しが立てやすい取引先までで、予算達成が見込めれば良いのですが、現実には難しいことも多いでしょう。その場合は、どこかで競合相手に“勝つ”ことが必要になります(競合相手から仕事を奪う)。どの分野でどの競合相手なら勝てるのか、“勝つ”と決めた取引先については、競合を圧倒できるだけの営業戦力の配置を行うことが求められます。

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