水は地に因りて行を制し、兵は敵に因りて勝ちを制す(孫子 虚実篇)
取引先の成長にのみ依存せず、持続的に売上を増やしていくためには、新しい取引領域を開拓することが重要です。最終的な目標を設定し、その目標から逆算して戦術を考案することが効果的です。最初は小さな一歩から始め、着実に進めていきましょう。
1.点を打つ(橋頭堡の確保)
最初に取るべき行動は、確実に情報が得られ、競合の影響を受けにくい「橋頭堡」を確保することです。橋頭堡とは、持続的に取引が発生しやすく、手間のかかる業務のことを指します。最初にどこで点を打つかは、その後の戦略に大きな影響を与えます。
橋頭堡の条件
本命業務と関連性があること: 最終的に目指す業務に関連する分野である必要があります。
定期的な打合せが必要な業務: 取引先の担当者と定期的にコミュニケーションが取れる業務が望ましいです。
労働集約的要素を持つ業務: 自動化しにくく、手作業や対応が必要な業務が該当します。
それほど高額でない業務: コストが高くない業務の方が、参入障壁が低く、手始めとして適しています。
ぎりぎりでも採算が取れること: 初期段階では利益率が低くても、継続的な収益が見込める業務を選ぶことが重要です。
2.点と点で線にする(二つ目の橋頭堡の確保)
最初の橋頭堡を確保した後は、同様に新たな橋頭堡を確保し、これらをつなぐ形で事業領域を広げていきます。あえて効率がそれほど良くない業務に挑戦することで、他の競合が手を出しにくい領域を確保することが可能です。重要なのは、単発的な売上ではなく、継続的な取引を優先することです。
継続業務と単発業務
継続業務: 取引額が大きくなくても、年単位で継続が期待できる業務。
単発業務: 一時的な需要増加により瞬間的に売上や利益を生む業務。
単発業務で瞬間的に利益を上げることは可能ですが、継続的な成長に繋がるかは不明で、社員や組織への長期的な還元も難しくなります。したがって、長期にわたり続く取引を重視することが大切です。
3.線と線で面にする(参入障壁を築く)
最後に、確保した点と線を結び、「面」を形成することが目標です。これにより本命の業務領域を取り囲み、参入障壁を築き上げることが可能になります。競合が容易に入り込めない領域を作り、取引先や市場における自社のポジションを確立します。
参入障壁の要素
製品の差別化: 他社と異なる独自の価値を提供できるか。
巨額の投資が必要か: 新規参入に多額の初期投資が必要であるか。
仕入れ先変更コスト: 取引先が他社へ切り替える際のコストが大きいか。
流通チャネルの確保: 特定の流通経路が独占的であるか。
その他のコスト面の不利: 新規参入者にとってコスト上不利な状況があるか。
政策や規制の制約: 参入に際し、法的な制限や規制が存在するか。
強い報復の可能性: 競合が参入に対して強い対抗策を取る可能性があるか。
新しい領域を確保し、持続的な成長を実現するためには、これらの要素を意識して戦略を練ることが重要です。小さな一歩から始め、確実に点を増やし、最終的には取引領域全体を支配することを目指しましょう。