日本の農業は近年、多くの課題に直面しています。食料・農業・農村基本法の制定から四半世紀が経過し、その間に日本農業を取り巻く環境は大きく変化しました。ここでは、現在の日本農業の状況をデータとともに分析し、将来的な展望を考察します。
1. 農業の産出額と所得の推移
農業総産出額は近年横ばいの状態が続いています。2022年の農業総産出額は約9兆円でしたが、肥料や飼料、光熱動力費の高騰により農業所得は前年比7.3%減少し、3兆1,051億円となりました。
2. 人口減少と農業従事者の高齢化
日本の総人口は2009年をピークに減少傾向にあり、農村人口の減少はさらに顕著です。特に基幹的農業従事者(主要な農業に従事する人々)は、現在の116万人から20年後には30万人まで減少すると予測されています。このような状況では、従来の農業生産方式では安定的な食料供給を維持することが困難となります。
3. 農地の消滅と経営体の変化
過疎化の進行により、農地の消滅が懸念されています。特に中山間地域では、集落の存続が危うく、農業生産活動の継続が困難になるリスクが高まっています。経営体数の減少の一方で、大規模経営体(耕地面積20ha以上や販売額5,000万円以上の農業経営体)の割合は増加傾向にあります。
4. 食料安全保障の課題
世界の食料供給は不安定化しており、日本の食料供給は輸入に依存しています。特に中国やインドなどの新興国の経済成長により、日本の食料調達力が相対的に低下していることも課題です。国内では主食用米の生産量が減少し、備蓄米が市場価格の上昇で不足する懸念もあります。
日本の農業は多くの課題に直面していますが、スマート農業の推進や政策の改革により、新たな可能性が広がっています。持続可能で競争力のある農業を実現するためには、技術革新の推進と農村振興の両立が不可欠です。今後の展開に注目しながら、農業の未来を支える取り組みが求められます。