価格は、代替可能な商品・サービスと比較し、決定します。価格を適切に設定しないと、利益を損ない、最終的には事業の継続が困難になることもあります。ここでは、代表的な価格設定法をいくつか紹介します。
1. コスト志向的価格決定法
製品やサービスの提供にかかるコストを基準に価格を決定する方法です。
① コスト・プラス法
- 計算式:価格=直接費+間接費+利幅
製造から販売までにかかったコストに、一定の利益を上乗せして価格を設定します。シンプルで分かりやすい方法ですが、競争環境や顧客価値を反映しにくい点には注意が必要です。
② マークアップ法
- 計算式:価格=仕入原価+仕入原価×値入率
仕入原価に一定の利益率を加えて価格を設定する方法です。例えば、「七掛け」の場合、仕入れ値は定価の7割となります。この方法は粗利率の管理が容易です。
③ ターゲット・リターン法
- 計算式:価格=総費用×(1+目標利益率)÷目標販売量
目標とする投資収益率を基に価格を設定します。損益分岐点分析を活用し、目標販売量に応じた価格を決定します。
2. 需要志向的価格決定法
顧客の価値観や需要に基づいて価格を決定する方法です。
① 知覚価値法
- 計算式:価格=知覚価値≒代替品価値
顧客が製品に感じる価値に基づき価格を設定します。市場調査や類似品の価格を参考に、売れる価格帯を見つけることが重要です。
② 差別価格法
- 計算式:価格=A≠B≠C
セグメントごとに異なる価格を設定する方法です。子供料金、休日料金、深夜料金などがその例です。利用者層や利用時間帯に応じて価格を変えることで、需要変動に対応できます。
3. 競争志向的価格決定法
競合他社の価格を基準に価格を決定する方法です。
実勢価格法
- 計算式:価格=プライスリーダー価格±α
業界内の価格支配力を持つ企業(プライスリーダー)を基準に、自社の価格を調整します。競合に依存するため、自社独自の価値を反映させる工夫が必要です。
4. 価格設定における注意点
① 取引先の価値観との乖離(コスト志向的価格決定法)
自社本位の価格設定は、取引先の価値基準から外れる可能性があります。独自性のない商品やサービスでは、価格設定方法そのものを見直す必要が生じることがあります。
② 必要以上の値引きによる利益流出(需要志向的価格決定法)
顧客価値や競合状況を把握せずに過剰な値引きを行うと、利益が大きく減少します。価格だけでなく、顧客の価値観や市場の相場を正確に把握することが重要です。
利益のないビジネスは続けられません。代替品や競合他社の価格をしっかりと把握し、戦略的な価格設定で競争を勝ち抜きましょう。