故に善く戦う者は不敗の地に立ち、而して敵の敗を失わざるなり。是の故に勝兵は必ず勝ちて、而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。(孫子 軍形篇)
停滞する市場においては、顧客の全体数が増えないため、顧客の奪い合いになります。ですので、既存顧客との関係を深め、LTVを向上する必要があります。顧客との関係性は一見客→継続客→ロイヤル客の順に発展していきます。
①一見客
取引理由:他より安かったから。よく通ってくれたから試しに。“今回の”提案は良かった。今までのところがミスをした。など
関係:仕事をたまに貰うだけでは未だ一見客。取引先担当者も、購買が役目であり、他を納得させる合理性があるかが発注の条件。
②継続客
取引理由:継続的に便宜を図ってくれる。知見・ノウハウが他より優れている。会社としての信頼性が高い。
関係:業務品質・取組姿勢が評価されると、信頼ある取引先となる。しかし業務については、合理性が判断基準。
③ロイヤル客
取引理由:特別な体験。例えば、経営危機の時、見捨てないで助けてくれた。伊勢湾台風の時、総出で助けてくれた。子供が熱のとき、閉店時間を延長してくれた。など。
関係:ほぼ無条件な信頼。
ロイヤル客化する取引理由で挙げた例は、実際にあったものです。いくら通っても、提案が評価されても、競合の壁を突き崩せないことが何度もありました。その時、顧客が述べた理由がこれらのものでした。法人取引においても、合理性を超える判断が下される場合があります。
無条件の信頼は、システムや合理性では創ることができません。“人”が提供する血の通った特別な体験こそが、ロイヤリティを創るのです。社員教育が大切な理由です。
「勝ちやすい状況」とは、既存顧客との関係を深め、競合が入り込めないようにすることです。つまり、一見客から継続客、さらにロイヤル客へと育てていく過程で、他社が容易に奪えない信頼関係を構築することが「勝ちやすい状況」を作ると言えます。
また、「合理性を超える特別な体験」によってロイヤル客を生み出すという考えは、孫子が強調する「勢い」や「形」を整えることに通じており、勝利を引き寄せるための戦略的な準備といえます。