業種別に見る事業再構築補助金12次公募の結果

補助金

2024年11月8日に発表された、事業再構築補助金12次公募の結果は、トライブレインの予想以上に厳しい結果でした。ここでは採択結果について、業種別に見ていきます。下の表は、事業再構築補助金WEBサイトで公表されている情報から作成しました。

1.製造業

縦軸に採択率、横軸に公募回をとったグラフです。製造業は、常に全体採択率より採択率が高く、第6次から第8次までは65%以上の採択率でした。全体採択率が26.5%へと低下した第11次・第12次公募においても40%以上の採択率と他業種と比較して相当高い採択率でした。

2.宿泊業・飲食サービス業

コロナ禍で大きなダメージを受けた、宿泊業・飲食サービス業は、第5次公募までは全体の採択率を上回る採択率でした。第6次以降は、全体の傾向と近い動きですが、第11次・第12次では、全体採択率との差が広がりました。

3.卸売業・小売業

卸売業・小売業は、全体採択率-αで、ほぼ全体採択率と一致した動きとなっています。

4.建設業、不動産業・物品賃貸業

建設業は、第6次以降はほぼ全体採択率と一致した動きとなっています。一方で、不動産業・物品賃貸業は常に全体採択率を下回る動きとなっています。特に第11次・第12次では、全体採択率との開きが大きくなっています。

5.情報通信業、運輸業・郵便業

第10次では、情報通信業、運輸業・郵便業ともに全体採択率を上回る採択率でしたが、第12次では全体採択率に近い採択率でした。

6.サービス業

第5次・第6次で教育・学習支援業が、第10次で学術研究・専門・技術サービス業が、全体採択率を上回る採択率でしたが、それ以外は全体採択率を下回って推移しています。第12次では全体採択率より相当低い採択率でした。

7.産業別従事者数と業種別採択率

縦棒が産業別従事者数(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構ホームページ)、折れ線が事業再構築補助金12次公募の業種別採択率です。卸売業・小売業の採択率が、従事者数と比べて相当低いことなど、はっきりした関連性を見つけることはできませんでした。

8.業種別経済波及効果との関係

『延長産業連関表からみた我が国経済構造の概要及び経済波及効果分析』説明資料(2021年8月19日 経済産業省大臣官房 調査統計グループ 調査分析支援室)にある、業種別の経済波及効果と採択率の関係も確認してみましょう。

特に「生産用機械」・「化学最終製品」等、製造業は、確かに財の増加に貢献しています。同様に、「その他の対事業所サービス」・「通信・放送」等も製造業と同等以上に財の増加に貢献しています(対2015年比でみた2018年)。生産波及効果で見ると、自動車産業は、確かに圧倒的な生産波及力を持つ業種ですが、情報通信や広告など、製造業以外にも生産波及力の高い業種も存在します。

9.結論:なぜ製造業だけが採択率が高いのか、わからない。

ここまで見てきて、事業再構築補助金において、製造業が突出して採択率が高い傾向にあることは確認できました。ただ、製造業以外にも従事者人口の多い業種は存在します。「事業再構築」という観点から従事者人口の動きを見ても、製造業は産業別従事者人口構成比で2019年15.8%から2023年15.6%へと0.2%低下しています。従事者人口の構成比が、2019年から2023年にかけて伸びた業種は、医療・福祉の0.9%、情報通信業の0.7%等です。これらの業種が採択率において特別に高い傾向を示している訳でもありません。

ものづくり補助金など製造業にとって利用しやすい補助金制度は他にもあります。トライブレインでは、製造業だけが突出して、事業再構築補助金採択率が高い理由について、合理的な理由をみつけることはできませんでした。

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました