善く戦う者は人を致すも人に致されず(孫子 虚実篇)
1.営業活動のスケジュール
営業活動では、取引先の活動スケジュールとの同期化が重要です。取引単位が大きな商品、サービスほど、活動スケジュールは年単位以上の長期に渡ります。
①取引先スケジュール:予算・計画期
3月決算の上場企業などは、9月~10月頃から来期の予算の検討に入ります。
営業活動の目標:シェア構造の変革
取引先内のシェアの構造を大きく変えるような重要提案は、取引先の来期予算の検討開始にスケジュールを合わせて実施する必要があります。
提案活動:戦略提案・長期提案
取引先の事業価値を向上させるような提案を目指します。取引先の経営計画との連動が必要です。取引先が上場企業であれば、経営計画はある程度公表されています。年間に行いたい主要な提案については、この時期にスケジュール化し、計画的に準備します。
②取引先スケジュール:内容検討期
年間計画から実行への落し込みを行う時期です。3月決算の上場企業であれば10月~12月頃がピークです。
営業活動の目標:シェア、売上総額の確保
自社の来期の成長と営業予算達成のために、売上に繋がる具体提案の量を確保します。
提案活動:取引領域の拡大
自社の主要な取引領域の周辺へと提案領域を拡大します。主要取引領域との連動により、シェア及び取引額の拡大を目指します。
③取引先スケジュール:実行準備期
3月決算の上場企業などは、1月~3月が主に該当します。来期計画・予算の最終承認とともに4月からの実施準備を行います。
営業活動の目標:取りこぼしの回避
自社の主要取引領域について、競合からの差し込みを防ぎます。きめ細かな提案と対応が必要です。
提案活動:改善提案
自社の主要取引領域に競合からの提案があれば、即座にミートし、競合の提案に改善を加えた再提案を行います。競合の動向に対する注意が必要です。
④取引先スケジュール:執行期
計画を具体的に実行する時期です。3月決算の上場企業などは、4月~10月頃が主な時期となります。半期、四半期毎に細かな見直しを行う企業もあります。
営業活動の目標:改善提案
実行準備期と同様に自社の主要取引領域について、競合からの差し込みを防ぎます。また取引先が実行した事項について情報収集を行い、自社なりに評価及び改善点の検討を行います。
提案活動:改善提案
実行準備期と同様に、自社の主要取引領域に競合からの提案があれば、即座にミートし、競合の提案に改善を加えた再提案を行います。競合の動向に対する注意が必要です。
⑤取引先スケジュール:検証期
特に新たに導入した施策等について、検証及び評価を行います。3月決算の上場企業などは、9月頃に上期の総括とほぼ同時に行うことも多いです。
営業活動の目標:“次の提案先”の確保
予算・計画期の重要提案に向けて、新たな提案先候補を獲得します。
提案活動:事例紹介・実績紹介
次の戦略提案に向けて、情報収集を目的とした事例紹介・実績紹介等を行い、取引先の反応を確認します。市場動向、競合動向についても把握に努め、次の注力先の見定めを行います。
2.KPIによる営業行動の改善
営業予算を含めて期初に設定した計画が、成果に至るまで、期末まで順調に推移することの方が少ないでしょう。営業行動の基礎となる訪問回数など、主要KPIを定め、滞っている地点を明確にするとともに、担当者・マネージャーそれぞれの改善行動を定めておきます。下表はその一例です。
3.不測の事態が発生した際の営業計画の修正
深刻な損失の多くは決定を間違えるより、間違いに気づくのが遅れたためか、面子や責任回避に拘り間違いを認めないために発生します。また、先般のコロナ禍など、期中に環境が大きく変化し、当初の計画から修正を迫られることもあり得ます。計画変更の条件、見直しの方向について、予め検討しておくことでいち早く対応できます。
①取引先原因による修正(短期事項)
内容:重要取引先とのトラブル、取引先担当者の異動・退社等による体制変更
状態:何らかの事由により、取引先との関係性が急激に変化した場合。代表的なケースはトラブル。その他に日常的に起こり得るケースとして、取引担当者の異動に伴い、購買方針・購買先の大幅な見直しが起きるなど。
基準:現在の取引関係の継続について疑念が発生する事項の発生
対応:予備戦力の強制投入・全体計画の一時中断
トラブル解決を全てに優先。一時的な労働時間の増加の容認、及びマネージャーの臨時的現場対応。計画の一時中断による遅延許可。
②取引先原因による修正(長期事項)
内容:取引先の事業継続への疑念
状態:天災・買収・不祥事・倒産等による取引先の閉鎖など、取引先の経営環境の大幅な変化
基準:現在の取引関係の継続について疑念が発生し、かつ回復時期の具体的な見込みがない場合
対応:戦力の再配置
当該取引先への戦力配置の見直し。及び取引先ランクを見直し、他取引先とのランク入れ替えを行い、人的資源についても再配置。
③自社原因による修正(短期事項)
内容:単年度業績見通しの未達(の確定)
状態:市場自体に大きな変化はないものの、期初計画の遂行が、何らかの事由により相当な確率で達成できない場合
基準:上期計画達成率及び下期見通し達成率
対応:間接費及び営業品質に直接影響を及ぼさない部分の原価削減による利益確保
一時的な経費削減により、営業利益の増加を図ります。削減目標は、取引先訪問に用いる交通費や提案費等、直接売上に影響する項目は削減対象から除外。長期投資の一時凍結。
④自社原因による修正(長期事項)
内容: 業績見通しの長期低迷
状態:コロナ禍等の経済状況の急激な悪化等、年単位で、業績の回復が自社・市場ともに期待できない場合
基準:売上見通し前年対比○%以下
対応:人件費削減、体制縮小 固定費を削減し、損益分岐点を引き下げ。人員解雇を行わない場合は、新規顧客・新規業務領域の開発に人的資源を振り分け。
取引先のスケジュールに合わせた営業活動の展開と、計画の柔軟な見直しが、営業成果の最大化に繋がります。競合に対する迅速な対応や、計画の進捗管理が、シェア拡大と収益確保の鍵となります。